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『光砕のリヴァルチャー』のシナリオ構成の考え方

『光砕のリヴァルチャー』のシナリオ構成の要点を書いていきます。

 

 

 

シナリオの軸は「戦闘」

 

『光砕のリヴァルチャー』のセッション(ひいてはシナリオ)の軸は、「戦闘」です。

(「とりあえず最後に戦闘をやって終わる」ゲームは世に数多あり、そういったゲームに多くふれていると見落としがちかもしれませんが……、)このゲームにおける「戦闘」は、展開や雰囲気の軸となっています

 

そして、この“軸”をより具体的に分解すると、このゲームの「戦闘」には、

 

  • 命がけ
  • 拠点や非戦闘員の防衛
  • 戦闘用のロボットをもちいる
  • 敵は巨大兵器
  • ふたりの共同作業

 

といった要素がふくまれています。

 

こうして見ると、(各々に“好み”はあることでしょうが)どの要素も芳醇なテイストをもっていますね。

 

これらの要素のうち、ひとつないしは複数をシナリオの“戦闘以外の部分”と絡めると、『光砕のリヴァルチャー』らしさと、シナリオに通底する一体感がつくりやすい、といえます。つまりは「プレイヤーの期待に沿うシナリオ」「遊びやすいシナリオ」に近づきます。

 

戦闘テイストの解釈と連想

 

それぞれのテイストからは、多様な解釈や連想が可能です。以下に一例を挙げます。

 

“命がけ”

 

命の危険への恐怖。自分の命とパートナーの命。それでも戦いに赴く理由。勇敢さ。死亡フラグ。実際に死んだキャラクター(NPC含む)。

 

“拠点や非戦闘員の防衛”

 

防衛対象をどう思っているのか。防衛対象からどう思われているのか。なぜ守りたいのか。防衛対象にどのような危険が降りかかると危機的に見えるか。

 

“戦闘用のロボットをもちいる”

 

ガジェット描写。発進描写。整備班との連携。管制室との連携。破損描写などをしやすい。新機体。新装備。そのほかメカニカル系の描写。

 

“敵は巨大兵器”

 

彼我のサイズ差。誰の目にもあきらかな危険性。視覚的なおそろしさ、おぞましさ。敵側のおそろしい武装や機能。どのような巨大兵器が襲ってくると危機的に見えるか。

 

“ふたりの共同作業”

 

命を預けるに足る相手か。どういう役割分担か。自分の行動が相手に影響する(ならびにその逆)。このパートナーシップの歴史は短いのか、長いのか、浅いのか、深いのか。定番のやりとりや決め台詞。戦闘にまつわるスタンスの一致している部分、一致していない部分。



趣旨の決定

 

上の例のように解釈や連想をひろげて、そのシナリオに入れたい要素が見えてきたら、それを記録しておきます。以下ではこれを「趣旨」と呼びます。

 

「趣旨」の数は、少なくとも1つ、多くとも2つくらいが、あつかいやすいはずです。(どんなに多いとしても3つが限度でしょう)

 

セッション構造を趣旨につなげる

 

『光砕のリヴァルチャー』のセッション構造は、原則ほぼ一定です(※「フラッシュバック」の有無のみ、変動的です)。

 

  • (フラッシュバック――ベータ版ルール。『Role&Roll vol.199』等に収録)
  • デイズ
  • ブリーフィング
  • ミッション
  • ミッションオーバー

 

そして、これらのうち「趣旨」を実現するために使いやすいパートは、じつのところ「デイズ」「ブリーフィング」(と「フラッシュバック」)のみです。なぜかといえば、

 

まず、「ミッション」はゲームルールとしての戦闘を進行するパートです。よって必然的に手順の確認や処理の解決が、プレイヤーとGMに負担をかけます。また、戦闘の機微がダイスであるていど左右されてしまうため、プレイヤーとGMの意図どおりの表現をできるともかぎりません。

 

つぎに、「ミッションオーバー」は、“戦闘が終わったあと”のパートです。戦闘を軸にして趣旨を決めたわけですから、この段階でできることはあまり多くありません。(「趣旨」の性質によっては不可能ではないものの、そのようなケースは全体のうち少数といえる割合でしょう。「ミッションオーバー」をひねった例としては、『ブロークン・ナーサリーライム』(『Role&Roll vol.200』収録)が挙げられます)

 

……といった事情がありますから、(「フラッシュバック」→)「デイズ」→「ブリーフィング」の流れのなかで、「趣旨」を実現することになります。

 

趣旨が1つの場合

 

この場合、“「デイズ」でネタを振り、「ブリーフィング」でそれを回収する”段取りが基本形となるでしょう。

 

たとえば、「趣旨」を「戦闘への恐怖心」としたなら、「デイズ」では恐怖ゆえに消極的・否定的で、「ブリーフィング」のなかでそれを乗り越える、といった展開が考えられます。

 

実装例としては、『光砕のリヴァルチャー』に収録されているシナリオ『day in day out』『かがやき祭り』が、どちらもこの型だと思います。(前者であれば「デイズ」が戦闘と無関係であるがゆえに趣旨=「戦闘が隣り合わせの生活」が表現されていて、後者であれば「デイズ」で“かがやき祭り”と関係性や愛着を形成したがゆえに趣旨=「その場所を守る」が表現されています)

 

「趣旨」の性質によっては、「フラッシュバック」もネタ振りの機会として使えます。

 

趣旨が2つの場合

 

この場合、「デイズ」と「ブリーフィング」が、それぞれ主に1つの「趣旨」を表現することとなります。

 

たとえば、「趣旨」を「新開発された装備」&「かつてないほど強力なソラバミ」としたなら、「デイズ」で新装備の開発や試験運用の描写をして、「ブリーフィング」で“それを使わないかぎり倒せなさそうなソラバミ”があらわれる、といった展開が考えられます。

 

もちろん、2つの「趣旨」が完全に無関係ということはふつうないはずなので(――その2つを意識的に選んだからには、なにか関連づけるヴィジョンがあったはずです)、完全な1:1対応で切り離せるわけでもありません。あくまで、考えかたの目安と思ってください。

 

実装例としては、『360 frontline』(サポートページ掲載)がこの型だと思います。「デイズ」で「リヴァルチャーをもちいた戦闘訓練」という「趣旨」を、「ブリーフィング」(と戦闘の内容)で「特殊なソラバミ」という「趣旨」を、それぞれ表現されています。(付け加えるなら、この2つの「趣旨」と戦闘の特殊ルールを合わせて、全体として「集団戦」が表現されてもいます)

 

エネミーのデータ

 

エネミーデータと切り離せるパターン

 

『光砕のリヴァルチャー』のシナリオは、それなりに高い割合で、エネミーのデータと切り離して構築できます

 

『day in day out』『かがやき祭り』は完全にそのパターンですし、『イーフェ航空艦隊救援依頼』(『Role&Roll vol.199』収録)も本質的にはそのパターンといえます(ソラバミのデータが付属してはいるものの、これはシナリオ構成と結合していません)。

 

切り離せる場合、シナリオにエネミーのデータを収録する必要はなく、つまりは作成する必要がないということです。(『イーフェ航空艦隊救援依頼』にエネミーデータが収録されているのは、ソラバミの造形ではなく特殊ルールが「趣旨」のために必要で、それと相性のよいエネミーが必要だったであろうことと、制作サイドとしてエネミーデータを拡充したい意図があったであろうことが推測できます)

 

エネミーデータと切り離せないパターン

 

一方、シナリオの「趣旨」とエネミーの造形が密接に結合している場合は、そうもいきません。『ブロークン・ナーサリーライム』や『360 frontline』がこのパターンです。

 

既製エネミーに当てはまるものがいる場合

 

「趣旨」を実現できそうなエネミーが既製データにあるなら、シナリオにはそれを参照するように記述すれば済みます。

 

既製エネミーに当てはまるものがいない場合

 

この場合は、エネミーデータを作成し、シナリオに含めるほかありません。

 

(エネミーデータの作成については、本稿の直接の主旨から外れるうえ、それ単体でかなりのテキスト量になることが予想されるため、本稿ではとりあつかいません。とりあえずわりと大変なので、うまくいかなさそうなら積極的に外注を検討するのがよいと思います)

 

特殊ルール

 

エネミーのデータと同様に、「主旨」の実現に必要なら、作成することになります。本稿ではとりあつかいません。

 

ミッションオーバー(終わりに)

 

以上が、『光砕のリヴァルチャー』のシナリオ構成の要点です。

 

いろいろなひとがいろいろなシナリオを書き、いろいろなリヴァルチャーが空を飛ぶことを願って――